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設立趣意

 ニホンカモシカは我が国の山岳生態系を代表する固有の大型草食獣です。カモシカをめぐる情勢は刻々と変化を続けており、将来にわたる地域個体群の保全や人との共存について日本各地で多様な課題を抱えています。植林された針葉樹の成長に伴う餌条件の悪化や、同じく大型草食獣であるニホンジカの分布拡大と個体数増加による生息環境の改変は、カモシカに深刻な影響を与えている可能性があります。特に、カモシカの分布の西に位置する九州、四国、紀伊山地、鈴鹿山地の4地域の生息密度は著しく低下し、環境省のレッドリストにより絶滅のおそれのある地域個体群に指定されています。一方で、カモシカが農林業被害を起こす地域で実施されている管理捕獲や、シカ・イノシシ捕獲用のくくり罠による錯誤捕獲が、地域個体群の衰退を加速させる可能性もあります。また、カモシカの市街地への出没や先述の錯誤捕獲など、人との共存においても様々な問題が発生しています。

 近年ではこうした課題に対して取り組む研究者や組織、関心を示す地域住民が増えつつありますが、意見や情報を交換し、連携をとる組織はありません。しかし、課題には地域性があるため、各地で得られる貴重な情報を関係者間で共有することや、一地域では対処できない全国的な連携を必要とする活動、調査研究プロジェクトの実施体制を整えることは特に重要です。また、根本的な課題解決のためには、一般市民へカモシカ自体の魅力やカモシカが抱える問題を普及啓発し、ボトムアップを図る必要があります。さらに、カモシカに精通する人材(研究者、行政関係者など)の育成は将来にわたる人とカモシカの共存のために必須であり、カモシカを学びたい意欲ある学生をサポートする組織が必要です。
そのため、カモシカに関する(1)情報の共有、(2)調査研究、(3)普及啓発、(4)人材育成のサポート等をおこなう日本クマネットワークのカモシカ版のようなものができないだろうか、ということで有志が声を上げることとなりました。 

 このネットワークは、日本における人とカモシカとの共存に向けて考え、活動する人達の緩やかな連絡組織または連合であります。全国的なネットワークを目指していますが、活動の基本は各地域の自主性に基づくものであり、地域ごとの活動を最大限尊重していきたいと思います。

組織として実体のあるものにし、社会的への働きかけを実行していくためには、会員制が管理・運営がしやすいと考え、個人会員制として始めることを想定しております。持続可能な活動に向け、当面はポータルサイトをイメージしたホームページの整備、メーリングリストによる会員間の意見交換と情報の共有、会員向けニュースレターの発行、フェイスブック等による情報の発信、年一回の総会の開催を主とし、シンポジウムの開催、助成金の取得等を目指し、実効性のある開かれた組織にしたいと考えております。
 

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